「今月は利益が出そうだから、何か経費を使わなきゃ!」「税金を払うくらいなら、新しい車を買ったり、倒産防止共済に積み立てたりしたほうが得ですよね?」経営者の方から、毎日のようにいただくご相談です。
たしかに、汗水垂らして稼いだ利益を税金で持っていかれるのは、身を切られるような思いがするものです。しかし、「節税」という甘い言葉に誘われて、10年後に会社をピンチに追い込んでしまう経営者が後を絶たないのも事実です。
今回は、永遠のテーマである「お金を払う節税」と「税金を払って残す選択」のどちらが正解なのか、10年後のキャッシュフローをシミュレーションしながら徹底解説します。
結論:10年後に笑うのは「税金を払って現金を残した人」です
いきなり衝撃的な結論かもしれませんが、実務の現場を数多く見てきた税理士として断言します。10年後に会社を大きくし、盤石な財務基盤を築いているのは、目先の節税に走らずに「正しく納税して現金をプールした経営者」です。
なぜなら、ビジネスにおける最大の武器は「キャッシュ(現金)」だからです。「節税=お金を払うこと」であれば、それは手元の現金を減らしていることに他なりません。
なぜ「節税でお金が減る」のか?1分でわかる仕組み
節税には大きく分けて2つの種類があります。
- お金を支出しない節税(減価償却費の計上、未払金の計上など)
- お金を支出する節税(消耗品のまとめ買い、生命保険、倒産防止共済など)
問題は「2」のお金を支出する節税です。例えば、利益が100万円出たときに、税率を約30%と仮定して考えてみましょう。
- 何もしない場合
30万円を納税し、70万円が手元に残る。 - 100万円の経費を使った場合
税金は0円。しかし、手元の現金も0円。
いかがでしょうか?「税金を払いたくない」という一心で100万円を使うと、結果として手元に残るはずだった70万円を失っているのです。「30万円の税金をケチるために、100万円を捨てている」という状況に気づくことが、経営判断の第一歩です。
10年後のキャッシュはどう変わる?具体的シミュレーション
毎年500万円の利益が出る企業が、「節税派」と「納税派」に分かれた場合を比較してみましょう。(法人税率を30%と仮定)
A社:節税大好き!利益を使い切る派
- 毎年500万円の利益が出るたびに、全額を設備投資や保険に充てる。
- 納税額は0円
- 10年後の現預金残高は0円(資産は増えていても、現金がない)
B社:しっかり納税!現金を残す派
- 毎年500万円の利益から、150万円を納税する。
- 手元に残る現金は350万円
- 10年後の現預金残高は3,500万円
| 比較項目 | A社(節税派) | B社(納税派) |
| 10年間の納税総額 | 0円 | 1,500万円 |
| 10年後の現預金 | 0円 | 3,500万円 |
| 銀行からの評価 | 低い(利益が出ていない) | 高い(自己資本が厚い) |
| 不況時の耐性 | 倒産の危機 | 余裕を持って耐えられる |
10年後、新しい事業に投資したいとき、あるいは予期せぬ不況(パンデミックなど)が来たとき、どちらの経営者が笑っているかは一目瞭然です。
税理士が教える「お金を払う節税」の落とし穴
「節税になるから」と勧められるスキームには、注意すべき共通点があります。
銀行融資が受けられなくなる
銀行は「利益(=返済原資)」を見て融資を判断します。節税で利益を圧縮し続けている会社は、格付けが下がり、いざという時に融資を受けられません。「節税で浮いた数百万円」よりも「融資で受けられる数千万円」の方が、経営の爆発力は上です。
出口戦略のない節税は「課税の繰り延べ」に過ぎない
倒産防止共済や一部の保険は、解約時にお金が戻ってきますが、その戻ってきたお金は「その年の利益(雑収入)」になります。その時に赤字であれば相殺できますが、黒字であれば結局そこで課税されます。ただ単に「税金を払う時期を先送りにしているだけ」というケースが多いのです。
浪費を「経費」と勘違いする
「どうせ税金で取られるなら」と、不要な高級車や高級家具を買うのは、経営ではなく単なる消費です。その車は、将来100万円以上の利益を生んでくれますか?もし答えがNOなら、それは経営を圧迫する重荷でしかありません。
【実務のコツ】「良い節税」と「悪い節税」の見分け方
もちろん、すべての節税が悪いわけではありません。プロの視点で見極めるポイントは以下の通りです。
積極的にやるべき「良い節税」
- 将来の利益につながる投資
優秀な人材の採用、ITツールの導入、広告宣伝費。 - お金が出ていかない控除
青色申告特別控除、税額控除(賃上げ促進税制など)。 - 含み損の解消
売れない在庫の処分、使っていない固定資産の除却。
慎重になるべき「悪い節税」
- 現金を減らすだけの支出
決算直前の不要な備品買い込み。 - 出口のない繰り延べ
利益が出続けているのに、ただ積立金を増やす行為。
税理士からのワンポイントアドバイス
経営者の仕事は「税金を減らすこと」ではなく「会社を存続させ、成長させること」です。私がおすすめしている指標は「自己資本比率を高めつつ、キャッシュを売上の3ヶ月分以上持つこと」です。これを達成するためには、一定の納税は「必要経費」だと割り切る勇気が必要です。
まとめ:10年後、あなたの手元にいくら残したいですか?
「お金を払って節税する人」と「税金を払ってお金を残す人」。短期的には、節税している人の方が得をしているように見えるかもしれません。
しかし、長期的には「税金を払えるほど利益を出し、内部留保を厚くした会社」だけが、次のチャンスを掴み、危機を乗り越えることができます。
- 節税は「キャッシュ(現金)」を最大化するための手段であるべき。
- 納税は「会社の信用」を買うための投資である。
この視点を持つだけで、あなたの会社の10年後は劇的に変わります。
もし、「自分の会社にとって、どこまでが適切な節税なのか分からない」「今の節税が将来のリスクになっていないか不安だ」という方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度ご相談ください。
貴社の財務状況を分析し、「10年後にお金が残る戦略的な納税プラン」を一緒に作り上げましょう。

